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玄関に鍵穴のない戦前的なつくりの住宅は、家の中に常に誰かがいるということを前提にして住まわれていた。そして、その誰かとはたいていの場合、主婦=妻であったわけで、一般の主婦は「家を守る」という役割を果たしている以上、留守番を頼むことなしには外出できなかった。戦前には夫が長男であれば夫の両親と同居するのが普通だったから、そういう家庭では留守番を頼む相手はいたわけだが、妻は舅や姑に外出をチェックされるのだから出かけにくいことに変わりはない。

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まして、老人が同居していない家では、家族観のみならず、それに対応した住宅の構造が主婦の外出を阻んでもいたことになる。戦前的な状況で威張っていられた亭主にはなんの不便もなかったか、と言うとそうでもないだろう。外から鍵で開けることができないとなると、女房の機嫌が悪くて起きてくれないと閉め出しを食うわけで、そのことで困った亭主もいたのではあるまいか。少なくともぼくは、遅い帰宅の際に妻に待ちかまえていられるよりも、自分で鍵を使って入るほうが気楽である。

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